別れ際に、友達でいよう、と言ったのは私のほうだった。
四年付き合った人と、駅前のロータリーで。
ロータリーの向こうを、バスが二台、出ていった。
口にした瞬間、自分の声が、やけに明るく響いたのを覚えている。
これで、少しは悪者にならずに済む…
その言葉を、彼がどう受け取ったのかを知ったのは、三か月後。
元カノと友達に戻って、そこから復縁したい。
そう考えている男性の話を聞くたびに、あの三か月の彼を思い出す。
反対に、友達の二年間を経て、元カノと結婚した幼なじみもいる。
同じ、友達から、でも、行き着く先はまるで違った。
元カノと友達から復縁を目指す前に、知っておきたいこと
友達から始める復縁は、遠回りに見えて、いちばん確かな道にもなる。
ただし、その友達が本物なら。
友達でいよう、は、復縁の約束ではない
別れ際の、友達でいよう、を、やり直せる合図だと受け取る男性は多い。
けれど、言った側にとっては、別れの痛みを和らげるための言葉のことがある。
約束でも、拒絶でもない。
どちらに近いのかは、そのあとの彼女の動きを見るまで、わからない。
幼なじみも、別れ際に、友達でいよう、と言われた側だった。
その言葉にすがるのは、早いうちにやめたらしい。
友達でいよう、を言った側の本音
私の、友達でいよう、は、正直言って逃げ道だった。
別れを言い出した側の罪悪感を、少しでも軽くしたかった。
本当に友達になるつもりがあったかと聞かれたら、うなずけない。
女性のこの言葉には、やさしさと、保身と、ほんの少しの名残が混ざっている。
どれがいちばん多いかは、言った本人にもわからないことがある。
それでも、言った側が友達の彼に求めているものは、意外と単純。
別れたことを、責めないでいてくれること。
それだけで、友達の席は、少しずつ温まっていく。
友達に戻れる別れと、戻れない別れ
友達に戻りやすいのは、どちらかを憎むほどの別れ方をしていないとき。
喧嘩の果てでも、浮気でもなく、すれ違いや、時期の問題で離れた二人。
裏切りがあった別れや、どちらかがまだ泣いている別れは、友達の形を保ちにくい。
彼女が、別の誰かのもとへ移っていった別れも、友達の距離は作りにくい。
自分たちの別れがどれだったかを、まず正直に振り返っておく。
友達になる準備は、彼女より先に自分の側で整える
友達に戻れるかどうかは、彼女の気持ちより先に、自分の側で決まる。
彼女に新しい恋人がいると知っても、顔に出さずにいられるか。
彼女の幸せを、少しでも喜べるか。
幼なじみは、ここが整うまで、半年かかったと言っていた。
あいつが笑ってる話を、最後まで聞けるようになるまでは、友達って名乗れないだろ
別れてすぐの友達宣言は、受け取る側には、別れ話の続きにしか聞こえない。
自分の中の、まだ恋人のままの部分が静まるまで、連絡は待つ。
友達としてLINEを再開する進め方
友達として連絡を取り直すなら、文面から、恋人だったころの癖を抜いておく。
最初の一通は、二人の話ではなく、みんなの話に誘う
久しぶりの一通に、昔の呼び方や、二人だけの言い回しを入れない。
懐かしさは、相手には、友達ではなく元恋人の顔として届く。
友達としての最初の一通なら、共通の友達との集まりに誘うくらいがいい。
久しぶり。今度〇〇の家で鍋やるんだけど、よかったら来ない?みんな会いたがってるよ!
二人の予定ではなく、みんなの予定に誘う。
断られても、二人の関係には傷がつかない。
鍋の日、来てくれた元彼が、わざと私の隣を避けて座ったら、私なら少しだけ見直す。
共通の友達がいないなら、彼女の今の知らせに、短く反応する形でもいい。
〇〇さんから、仕事で大きい役を任されたって聞いたよ。おめでとう
返事が来たら、二往復くらいで、こちらから切り上げる。
最初の数回は、物足りないくらいで終わらせるのが、友達の距離。
連絡の回数は、ほかの友達と同じくらいに
友達同士のLINEは、毎日続くものではない。
用があるとき、面白いものを見つけたとき、それくらいの間隔。
元カノにだけ毎日送っていたら、それは友達の頻度ではない。
目安にするなら、ほかの友達に送っている回数。
それを超えた分だけ、下心が文面からはみ出していく。
誘いも近況も、みんなの話を軸にする。
〇〇たち、来月キャンプ行くらしいよ、行く?
ハートや、恋人時代のスタンプは封印する
文面と同じくらい、本音が漏れるのが、絵文字とスタンプ。
ハートの絵文字や、交際中に二人で使っていたスタンプ。
どちらも、友達のトークに混ざると、そこだけ昔の空気が戻ってくる。
私の元彼は、別れたあとも、二人で買ったうさぎのスタンプを送り続けてきた。
そのうさぎを見るたびに、友達の距離が、どこかへ消えた。
使うなら、誰とのトークにも使っている、ふつうのスタンプだけ。
思い出話は、彼女が出すまで出さない
あの旅行、楽しかったよね。
こういう思い出話は、友達の距離を、一気に恋人のころまで巻き戻す。
巻き戻されるのを、彼女が望んでいるかどうかは、わからない。
元彼の口から、あの旅行、が出るたび、私は返事の語尾をひとつ短くしていた。
思い出は、彼女の口から出るまで、こちらからは持ち出さない。
出てきたら、そのとき初めて、笑って乗ればいい。
おやすみ、は送らない
別れて一週間たったころから、突然、元彼から毎晩おやすみが届きはじめた。
友達として、の言葉を、必ず添えて。
(まさか、毎晩とは…)
今日は誰と会ってたの、と聞かれた夜もある。
通知に彼の名前が出るたびに、げんなりする自分がいた。
友達の顔をした、恋人の延長。
三か月目の夜、私は、友達なら、毎晩のおやすみはいらないよ、と送った。
それきり、彼からの連絡は途絶えた。
はぁ…、そう言わせたのは、友達でいようと言った私のほうなのに。
あの時、彼が一度でも、みんなで集まろう、と誘ってくれていたら。
その先がどうなっていたかは、今もわからない。
おやすみは、恋人の言葉。
友達に戻ったつもりなら、一日の終わりの一通は、手放しておく。
友達の期間に、やってはいけないこと
友達の期間は、彼女が、元彼をもう一度見直す時間でもある。
彼女の新しい出会いに、顔色を変える
友達として会っていれば、いつか、新しい出会いの話を聞く日が来る。
そこで口数が減ったり、相手のあらを探したりすれば、友達の仮面はその場ではがれる。
比べない、悪く言わない、根掘り葉掘り聞かない。
元彼に新しい恋の話をするとき、女性は、相手の顔を思いのほかよく見ている。
そこで本気で喜んでくれた人を、私はたぶん、一生悪く言えない。
幼なじみは、元カノに相手ができたと聞いた日、店のトイレにこもったらしい(泣)
それでも席に戻って、よかったじゃん、と言えた。
あれが言えなかったら、たぶん、あいつとは今もただの他人
友達という名目で、恋人の距離に入り込む
友達だから、を理由に、恋人のような誘いをかける人もいる。
夜景のきれいな店、二人きりの遠出、誕生日の夜の予定。
女性は、友達としてだから、という言葉の裏を、思っているより早く見抜く。
見抜かれた瞬間、友達としての信用まで、一緒に失う。
誘うなら、ほかの友達とも行く場所に、普通の時間帯で。
二人きりで会うのは、みんなで会う回数を何度か重ねてから。
別れた原因を、友達の顔で蒸し返す
友達として飲んでいると、別れたころの話に流れる夜がある。
あのときお前が、と、こちらの言い分を並べはじめたら、そこで友達は終わる。
別れの理由は、友達の席で決着をつける話ではない。
聞かれたら、自分の足りなかったところだけを、短く話す。
彼女の側の落ち度は、彼女が自分で口にするまで、触れずにおく。
復縁したい気持ちを、共通の友達に話して回る
共通の友達に、実はまだ好きで、と打ち明けたくもなる。
けれど、話した分だけ、その気持ちは、いつか彼女の耳に届く。
本人より先に周りが知っている復縁ほど、女性が身構えるものはない。
話すなら、彼女とつながりのない友達に。
何年も、友達のままで待ち続ける
友達の期間が長くなりすぎると、彼女の中で、元彼の席が友達の列に落ち着いていく。
一年たっても二人の距離が動かないなら、待ち方を変える時期。
友達のままでいることに、自分が疲れていないか。
友達の顔を続けるのがつらくなったら、それも、立ち止まって考える合図。
幼なじみの場合は、二年。
それ以上だったら、たぶん自分が持たなかった、と言っていた。
友達から一歩進んでいいサイン
友達の期間に、彼女の側の温度が変わりはじめると、いくつかの小さな変化が出てくる。
どれかひとつで決めずに、二つ三つ重なってから動く。
恋愛の近況を、向こうから聞いてくる
最近どうなの、いい人いないの、と、彼女から探りが入る。
友達としての興味なら、この質問は、もっと軽く流れていく。
答えを聞いたあとの、彼女の一瞬の間に、気持ちがにじむ。
私自身、別れた人に、この質問を投げた夜がある。
いない、と返ってきて、なぜかほっとした。
その夜の私が何を考えていたのか、今でもうまく説明できない。
友達になってから話したことを、彼女がよく覚えている
昔の二人の話ではなく、友達に戻ってからの話を、彼女が覚えている。
新しい職場の上司の名前、始めた趣味、先月行った旅行先。
今の元彼に、もう一度興味が向きはじめたしるし。
昔の彼ではなく、今の彼を見ている、ということ。
弱っている話を、真っ先に打ち明けてくる
仕事で失敗した、家族と揉めた、体調を崩した。
弱っているときに、彼女が連絡してくる先に、元彼が入っている。
それは、友達の中でも、いちばん内側の席。
ここで恋の話に持ち込まず、ただ話を聞く。
幼なじみは、彼女の母親が入院したとき、病院の最寄り駅まで迎えに行ったらしい。
このときに好きを差し込むと、相談の相手から、下心のある人に席が変わる。
友達なのに変だね、と彼女が笑う
ある日、彼女の口から、こんな言葉が出ることがある。
なんか、友達なのに変な感じだね
友達の形が窮屈になってきた、と、彼女自身が気づいたしるし。
ここで、じゃあ戻ろう、と飛びつかない。
そうかもね、と笑って受け止めて、次に会う約束だけを決める。
答えは、彼女の中で、まだ形になりきっていないから。
私も一度だけ、別れた人の前で、この言葉をこぼしたことがある。
その先は、ここには書かないでおく(笑)
友達から復縁へ切り替える進め方
友達の線を越えるのは、一回だけ。
切り出すのは、LINEではなく、会っている時間に
復縁の話を、LINEで切り出すのは避けたい。
文字だけで伝えると、友達として積み上げた時間まで、軽く見えてしまう。
LINEの出番は、会う約束を取りつけるまで。
誘いは、いつもの友達の誘いと同じ顔で。
来週の土曜、前に話してた店、行ってみない?
切り出す前の一週間は、LINEの回数を、いつもより増やさない。
急に増えた連絡は、それだけで、何かあると気づかれる。
場所は、友達として何度も行った店より、少しだけ特別なところがいい。
いつもの店だと、彼女は、友達の顔のまま聞いてしまうから。
切り出しは、友達の時間へのお礼から
幼なじみが最初に口にしたのは、好き、ではなかった。
友達でいてくれて、ありがとう。でも、友達のままじゃ足りなくなった
お礼から入られると、彼女は、友達の時間が大事にされていたと知る。
その安心が、答えを考えるときの足場になる。
いきなり好きから入ると、友達だった時間が、ただの待ち時間に見えてしまう。
断られたら友達も続けられない、と正直に言う
復縁を切り出すことは、友達の関係を賭けることでもある。
幼なじみは、そこを隠さなかった。
断られたら、しばらく友達もできない。それでもいいから、もう一回、俺と付き合ってくれないか
ずるい言い方に聞こえる気もする。
実際、彼女は少し笑って、ずるいね、と言ったらしい。
けれど、断られても友達でいられる、と嘘をつくほうが、彼女には重い。
答えがノーなら、言ったとおりに、しばらく距離を置く。
言ったことを守る背中が、いつか、もう一度の機会につながることもある。
幼なじみが、友達の二年間でしたこと
夕方の河川敷を、彼の家の犬と歩きながら、二年間のことを聞いた。
一度も、好きを口にしなかった。
誘うのは、月に一回まで。
彼女に恋人がいた半年間は、自分から連絡しなかった。
引っ越しの日だけ、ほかの友達と一緒に、手伝いに行った。
友達のふりしてる間、帰り道は毎回しんどかったけどな。
結局、俺がやったのは、友達として普通にしてただけ。おい、引っ張るなって!
話の途中で、犬が何度も草むらに突っ込んでいく(笑)
彼女は、三日考えさせて、と言って、二日で返事をくれたらしい。
あの家では今、別れた日にも、毎年ケーキを買う。
友達だった二年がなかったら今はないから、と奥さんはくすっと笑う。