深夜1時の布団の中。
スマホの白い光が、私の顔だけを照らしていました。
気になっていたTくんから来た返信は、たった一行。
nerd🤓
直前に送ったのは、行きつけの純喫茶の固めプリンに捧げる長いラブレター。
カラメルの焦がし具合から器の重みまで、400字ほど語り倒していたのよね(笑)
(待って、これ引かれてる?バカにされてる?)
指先が冷たくなって、耳の奥で心臓がドクドク鳴りはじめる。
とっさにスクショを親友に送ったけど、こんな時間じゃ起きてるわけないでしょ。
仕方なく、自分で検索窓にnerd意味と打ち込みました。
英語のスラングって、辞書を引いても温度までは載ってないんですよね。
紙の上の訳と、トーク画面で息をしている意味には、ほんのわずかなズレがある。
そのズレを知っているかどうかで、次に打つ一文がまるで違うものになる。
nerdの意味と読み方、LINEで使われるときのニュアンス
日本語のLINEに、突然まぎれ込んでくる英単語nerd。
送り主は、洋画や海外ドラマ、英語のショート動画が好きなタイプが目立ちます。
動画のコメント欄で覚えた言葉を、そのままトークに持ち込んでいる感じ。
辞書ではオタクやガリ勉、もとは悪口だった言葉
読み方はナード。
英語圏で生まれた俗語です。
辞書を開けば、オタク、ガリ勉、専門バカなんて訳が並ぶ。
流行にうとくて人付き合いが苦手、というおまけ付きで。
生まれは1950年前後のアメリカ。
由来には諸説あり、絵本に出てくる架空の生き物の名前が始まりだという話も。
青春映画でいえば、分厚いメガネの男の子の役どころ。
スポーツ万能の人気者たちに、廊下で小突かれる側ですね。
もとをたどれば、いじめっ子が浴びせる悪口でした。
この歴史、あとで効いてくるので覚えておいて。
今のnerdは好きなことにのめり込む人への愛あるツッコミ
ところが、いつの間にか風向きが変わりました。
最近のネイティブの間では、nerdの前に分野名を置く使い方が定番。
映画nerdは映画をこじらせた人、文法nerdは言葉づかいの鬼。
本人が自分から名乗るケースも、ぜんぜん珍しくありません。
胸にnerdとプリントされたTシャツが、普通に売られているほど。
帰国子女の同僚は、ルームメイトに君って本当nerdだねと笑われたそう。
一瞬ひるんだら、かわいいって意味も入ってるからね、とフォローされたんだとか。
かつて人を突き放すために使われた言葉が、愛情表現にまで出世したわけ。
形容詞にするとnerdyで、なんかマニアっぽい、くらいの軽さで使われる。
似た単語にgeekもあります。
どちらが好意的に響くかは、話す人によって答えが割れるところ。
LINEで受け取る分には、そこまで気にしなくて大丈夫。
🤓と☝️🤓の絵文字の意味はけっこう違う
nerdとセットで送られてくることが多いのが、大きなメガネの🤓。
正式名称にもnerdの文字が入り、勉強熱心なキャラを表す絵文字です。
厄介なのは、人差し指を立てた☝️と組み合わせた☝️🤓のほう。
並びが🤓☝️でも中身は同じ。
2022年ごろ、海外のSNSで広まったミーム。
頼まれてもいない解説を始める人へ、釘を刺すときのお決まりです。
えっと実はですね、と得意げに話し出す、あの感じ。
🤓だけなら、愛嬌のあるオタク顔。
☝️🤓になると、理屈っぽいぞ、という皮肉が加わる。
相手の言い間違いを正した直後にこれが来たなら、要注意。
言い方が先生みたいだったかどうか、一度振り返っておくと安心。
LINEのnerdは脈ありか、送り主の本音を読み解く
スマホを握りしめたまま朝を迎える前に、見ておきたい手がかりがいくつかある。
まずは直前に送った自分のメッセージを見返す
nerdがなんの前ふりもなく届くことは、まずない。
相手の頭の中を想像するより先に、自分が送った一通を読み返してみて。
推しや趣味の話を長々と書いていたなら、その熱量を面白がっている証拠。
私の目安は、自分の文面が相手の直前の返信の3倍を超えているか。
そこまで差がついていたら、nerdはそのギャップを笑いに変える気づかい。
訂正やうんちくを重ねた覚えがあるなら、話は別かもしれない。
講釈くさいと受け取られた可能性アリ。
プリンの夜の私は、どう見ても愛が暴走していたほうでした(笑)
笑や絵文字、返信の速さでわかる好意とからかいの境目
同じnerdでも、後ろにぶら下がった記号や文字で、読み方の見当はつく。
nerd笑、nerd🤓、nerdすぎ。
こんな軽い飾りつきなら、ただのじゃれ合い。
全部大文字のNERDなら、声を出して笑っているくらいの勢いがある。
ハートまで添えてあったら、もはや好意を隠す気がないレベル。
すぐあとに質問が続いていれば、もっと聞かせての裏返しです。
気をつけたいのは、nerd.とピリオドで締められていたとき。
英語のチャットだと、文末のピリオドはそっけなく映ることもあって。
話題をいきなり変えられたなら、相手の気持ちは次へ移りかけているのかも。
返信の間隔が急に空いたときも、書きすぎたかなと立ち止まるくらいがちょうどいい。
女性が送るnerd、男性が送るnerd
ここからは、女友達との飲み会でしか出てこない本音を少しだけ。
女性から男性へのnerdは、中身の大半がかわいいの言い換え。
得意分野に差しかかると、彼らはちょっと早口になる。
その早口に心をつかまれても、真正面から褒めるのはさすがに照れくさい。
だから茶化す形を借りて、好意の端っこだけを渡しているんです。
どうでもいい人の趣味語りには、nerdと打つ気力すら湧かないのが女心。
男性から来るnerdは、照れ隠しと冷やかしの中間くらいのテンション。
男友達に聞いてまわった感触だと、興味のない相手の長いメッセージはスルーが基本。
わざわざ反応する手間すら惜しむらしい。
いじってきた時点で、関心は確かにあるってことなんだよね。
nerdと言われたときのLINEの返し方
ここで返す一通が、この先の流れを左右する。
開き直って、さらに熱弁をふるう
好感度が上がりやすいのは、堂々と認めてしまうやり方。
「nerdなのは否定しない。あと3つ語っていい?」
こう胸を張られると、送った側は思わず吹き出しちゃう。
自分の偏愛を恥ずかしがらない人って、男女関係なく色気があるんですよ。
もったいないのは、ごめん長かったよね、と慌てて謝ってしまうパターン。
謝られた側は、軽い気持ちで打った冗談を後悔しはじめます。
(え、そんなつもりじゃなかったのに…)って。
nerd返しでラリーを続ける
余裕のある日は、同じ言葉で切り返すのも一興。
そっちこそ車の話になると相当nerdだけどね笑、なんて具合に。
テニスのラリーみたいに言葉が行き来しはじめると、ふたりだけの合言葉ができあがる。
そのうちnerdは、内輪にしか通じないあいさつに育っていく。
nerdをデートの口実にすり替える
さて、あの夜の続きを。
画面のnerdと🤓を20分近く眺めたあと、腹をくくって2通に分けて送りました。
自覚あります笑、という1通目。
じゃあ本物を確かめに来る?という2通目。
送信ボタンを押したとたん親指が震えて、スマホを枕の下に押し込んだ。
数分後の返事は、行く、土曜空いてる、の二言。
頬がじわじわ熱を帯びて、掛け布団ごと足を天井に蹴り上げたのはここだけの話(笑)
土曜の純喫茶で、彼はスプーンを入れる前にプリンを三方向から撮影していた。
どっちがnerdなのよ、と私は口の中でつぶやいた。
nerdと言われたら、相手が一歩こちらへ踏み込んできたと思っていい。
こちらも同じ歩幅で距離を詰め返すと、会話にリズムが生まれる。
プリンの話なら、プリンそのものを会う理由にしてしまう。
これ以上自然な誘い方を、私はまだ知らない。
刺さってしまったときは、軽さを残して伝える
一方で、nerdと聞くだけで古傷がうずく人もいるはず。
思春期にこの単語を投げつけられた記憶を持つ人は、笑って流さなくていい。
「nerdって言われると、昔のあだ名を思い出して身構えちゃう笑」
おどけた口調で、引っかかった事実だけはそのまま置いておく。
悪気のない人なら謝ってくれるし、次から言葉を選んでくれます。
それでも繰り返してくる相手は、あなたの痛みより自分のウケを取る人。
自分からLINEで送るときのnerdの使い方
言われる側だけじゃなく、送る側に回るのもあり。
ただし、扱いを間違えると刃物にもなる点は忘れずに。
送りどきは相手が好きなものを語り終えた直後
狙い目は、相手のお気に入りトークがひと段落したタイミング。
キャンプ道具の重さを、グラム単位で説明されたとき。
推しバンドのセットリストを、1曲目から全部教えてもらったとき。
そこで「nerdすぎる笑」で止めると、冷やかされただけの後味が残ります。
続けて、でもその話もっと聞きたい、と添えれば、軽口と興味がいっぺんに届く。
茶目っ気のあとに、質問をひとつ。
この順番さえ守れば、向こうは次の話まで用意して待っている。
分野名をくっつけるとリスペクトに変わる
英語圏の言い回しにならって、○○nerdの形にすると、ずいぶん柔らかくなります。
コーヒーnerd、サウナnerd、地図nerd。
その道を極めた人、という響きが乗るので、言われた側もどこか誇らしげ。
手応えがあったのは、完全にラーメンnerdじゃん、師匠と呼ばせて、と送った夜。
向こうからはスタンプ3連打と、手書きメモみたいなおすすめ店リストが来たっけ。
何nerdと呼ぶかで、その人をきちんと見ているかまで意外と伝わるもの。
nerdを送らないほうがいい相手と場面
手軽なワードほど、使いどころを誤ると空気が一気に凍りつく。
知り合って日が浅い相手には、まだ早い。
おちょくりが笑いで済むのは、信頼の貯金があるからこそ。
数往復しかLINEしていない段階だと、ただの失礼に転ぶ。
横文字のネットスラングに縁がなさそうな人にも注意。
意味を検索されたら、真っ先に目に入るのは辞書の冷たい訳のほうだから。
グループLINEで名指しするのも危ない。
二人きりなら笑えるネタも、みんなの前だとマジで公開処刑。
メガネや服装など、見た目にからめるのもアウト。
熱中ぶりに向けたはずのひと言が、容姿いじりに化けてしまうから。
仕事の悩みや深刻な相談の途中で☝️🤓を返すのも、正直言ってかなり冷たい。
昔のつらい話を聞いたことがある相手なら、どんなに打ち解けても封印を。
nerdで近づいた人、遠ざかった人の実話
最後に、同じnerdで天国と地獄を見た二つの出来事を。
☝️🤓を送って既読のまま半日が過ぎた失敗談
マッチングアプリで知り合った、半導体メーカー勤めの彼とのやり取り。
仕事内容を聞いたら、回路の仕組みの説明が画面3スクロール分も返ってきたんです。
深く考えずに、☝️🤓だけを送信。
既読はすぐについた。
なのに、返事が来ない。
1時間、3時間、気づけば日付が変わっていて、胃のあたりがキリキリ痛む。
(もしかして、怒らせた…?)
スマホを伏せては表に返し、また伏せる。
翌日の昼にやっと届いたのは、学生のころ散々言われてたからさ、とだけ。
彼の中で🤓は、教室のうしろから飛んでくる消しゴムのかけらと地続きだった。
その場で謝って、会話も続きはした。
結局、あの時すり減った何かは、最後まで戻らなかった気がする。
はぁ…思い出すだけで、背中にいやな汗がにじむ(泣)
真剣に答えてくれた人を、絵文字ふたつで片づけたこと。
それが、いちばんの失敗でした。
脈なしだと勘違いした男友達の逆転劇
もうひとつ、男友達のケイの話を。
彼は職場の後輩の女の子に、天体観測の魅力を延々と書き連ねたらしいの。
彼女からの答えは、nerd笑、の一言だけ。
これを脈なしの宣告だと受け取ったケイは、何も返さず1週間放置。
飲みの席でそれを聞いた瞬間、グラスを口に運ぶ手が止まったよね。
いやいや、それ脈ありのサインだってば!
私の勢いに押されて、ケイはnerdなりに星の見える場所を調べた、と送り直した。
まさかの即レス!
翌月ふたりは、山の上の駐車場で流れ星を数えていたとか。
あのnerd笑がなかったら一生誘えなかった、というのが本人の弁。
たった一語をどう読むかで、恋の行き先はこんなにも分かれる。
nerdは、何かに没頭できる人にだけ贈られる、一風変わった勲章みたいなもの。
送る前に相手の顔を思い浮かべるだけで、nerdはちゃんとやさしい言葉になる。