会いたいって言うくせに、日付は決して口にしない男がいる。
三十一歳の春、私が夢中になったのは、まさにそういう人だった。
連絡が来るのは、たいてい夜十一時を過ぎてから。
見た瞬間、手首の内側で脈がドクンと跳ねて、気づけば終電を調べてた。
同じ言葉から、今の恋人との日々が始まったのも本当の話。
違っていたのは、その後ろに続く一行だけ。
その一行のあるなしで、恋の行き先は昼と夜ほど分かれていった。
付き合っていない彼から、会いたいと届いた夜。
知りたいのは、言葉の表向きの意味なんかじゃないはず。
この人を信じて会いに行って、あとで泣かずに済むのかどうか。
胸の中で渦を巻いているのは、たぶんその一点でしょ。
付き合ってない男の会いたいLINE、本気かどうかは四文字の外に出る
女友達から、これってどういう意味?とスクショが送られてくる。
そんな役回りを、かれこれ十年近く続けてきた。
見せられた会いたいは、ざっと百通は超えてるかも。
それだけ眺めてわかったのは、判断の材料が短い文字列の中にほとんどないってこと。
日付も場所もない会いたいは、半分しか書かれていない手紙
会いたい、で終わるLINEは、宛名だけ書いて本文が抜け落ちた手紙に近い。
肝心の、いつとどこで、がすっぽり空白。
その空白を埋める役目は、受け取った側に丸投げされてる。
本気の男は、残りの半分も自分で書いてくる。
来週の金曜、仕事終わりにあの焼き鳥屋どう?みたいに。
日付が入ったとたん、会いたいは気分から予定に変わるの。
何度も会いたいと言うわりに、日取りだけがいつまでも決まらない。
そんな彼が味わっているのは、会う約束じゃない。
会いたいと口にするときの、ほろ酔いみたいな心地よさ。
こっちは一晩じゅう噛みしめるのに、向こうは翌朝には送ったことも忘れてる。
はぁ…この温度差よ。
送信時刻は、本人よりずっと雄弁にしゃべる
LINEを開いたら、吹き出しの横の小さな数字に最初に目をやる。
夜十一時を回ってから届いた会いたいは、ちょっと疑ってかかっていい。
お酒が入っているのか、ひとりの部屋が急に広く感じたのか。
深夜の会いたいは、月見草によく似てる。
夜のうちにふわっと開いて、朝日が差すころにはもうしぼんでるの。
平日の夕方七時台なら、事情がやや変わってくる。
仕事帰りの電車の中で、ふとこっちを思い出した一通。
しらふの頭で打った会いたいには、それなりの体温が宿ってる。
週末の昼に鳴る会いたいは、すでにお店を探しながら打ってる段階。
週末に会えない男の会いたいは、一度立ち止まって読む
同僚のサキが、アプリで知り合った人と三か月やりとりしていた頃の話。
彼からの会いたいは、なぜか火曜か水曜の夜にしか来ない。
週末に誘えば、実家の店の手伝いがあると毎回かわされたそう。
(そのお店、年中無休なの…?)
四か月目に入ったころ、共通の知り合いがうっかり口をすべらせた。
彼には、一緒に暮らしている恋人がいるって。
サキはその場で笑ってみせたあと、トイレでしばらく手を洗い続けていた。
サキの彼みたいに、土日と祝日はいつもふさがっていて、昼間の電話にはほぼ出ない。
ツーショットの写真を、かたくなに撮らせない。
こういう人の会いたいは、どれだけ甘くても返信の前に深呼吸をひとつ。
疑いすぎて損をするより、信じすぎて失った月日のほうが、ずっとあとまでこたえるから。
会いたいと送る男性心理、三つ下の弟に聞いてみた
男の本音は、男に聞くのが手っ取り早い。
そう思い立って、三つ下の弟を実家の台所でつかまえた。
母の作り置きの煮物をつまみながら、弟は面倒くさそうに口を開く。
ひまな夜にも打つよ、と弟はあっさり認めた
弟いわく、会いたいはそこまで重たい言葉じゃないらしい。
飲み会から帰って、しんとした部屋の電気をつけたとき。
なんとなく誰かとしゃべりたくなって、トーク一覧を上から眺める。
そこで目に留まった子に、ぽんと送る夜もあるとか。
上から眺めるって何、と煮物の里芋を落としかけた。
来てくれたらラッキー、来なくても別に困らない、というのが弟の言い分。
同じ夜に同じ文面を、何人かに配る男もいるわけね。
その軽さに、姉としてはこめかみがピクピクした(笑)
本命ほど会いたいの四文字を打てない男もいる
ところが、話には続きがあった。
本気で好きな子には、会いたいなんて打とうとすると指が固まるって。
弟の場合、代わりに行ってみたい店のリンクを送る。
映画の上映時間を調べて、この回どう?と聞いてみる。
気持ちを言葉にする度胸がないぶん、誘いの形に包んで手渡してるの。
弟の話がどこまで男全体に当てはまるのか、私には見当がつかない。
好きな相手にほど会いたいを連発する人だって、きっといる。
ただ、会いたいと言ってこないからといって、脈なしと決めつけるのは早い。
言葉の甘さより、カレンダーに入った予定の数を数えたほうが、本心に近づける。
脈ありの会いたいには、予定がくっついてくる
本気の会いたいには、いくつか共通する手ざわりがある。
日付か候補日が、ほぼ必ず一緒にやってくる。
前に話した小さなことを、細かく覚えているのも特徴。
猫舌だと言ったのを忘れずに、熱々の小籠包の店をリストから外してくれる、とか。
待ち合わせは駅前やお店で、いきなり彼の家にはならない。
別れ際には、あの喫茶店のプリンは次ね、といった約束が自然にこぼれる。
会っていない日にも、他愛ないやりとりが途切れない。
今日そっち雨すごくない?みたいな、用件ゼロのLINE。
恋心って、案外そういうどうでもいい一文に漏れ出すもの。
体目当ての会いたいは、待ち合わせ場所でぼろが出る
下心が先に立つ会いたいは、誘う場所で正体が透ける。
今どこ?今から来れる?うちで飲まない?
こんな言葉が畳みかけてきたら、目的はほぼ夜のその先。
昼のカフェを提案すると、返信の歯切れが急に悪くなる。
会わない日は、驚くほど音沙汰がない。
すでに一線を越えた相手なら、会いたいは別の辞書で引いたほうがいい。
中身が、顔を見たい、なのか、ぬくもりが欲しい、なのか。
別れた元彼がよこす会いたいも、同じ辞書で読んでかまわない。
確かめる方法は、ひとつだけ。
明るい時間に誘って、彼の熱が冷めないか見てみること。
真実は、たいがいそこに転がってる。
夜しか会えない人に、五か月を預けた話
午前零時、タクシーのメーターとにらめっこ
冒頭の彼と出会ったのは、友達の誕生日会の二次会だった。
映像の仕事をしていて、笑うと目尻がくしゃっと下がる人。
連絡先を交換して三日後、突然、最初の会いたいが舞い込む。
時刻は午前零時五分。
(え、今?今って、今!?)
パジャマの上にコートを羽織って、大通りでタクシーを止めた。
指定されたのは、彼の部屋から歩いて二分のバー。
メーターの数字がカチッと上がるたび、膝の上の携帯が手汗でぬるりと滑る。
すっぴんを隠すマスクの内側で、自分の息づかいだけがやけにうるさかった。
あの夜から、私の週末は彼の気まぐれ待ちに変わっていく。
金曜も土曜も、お風呂にまでスマホを持ち込んで、音量は最大。
友達の誘いも、いつのまにか断るようになってた。
ダサいでしょ。
でもあの頃は、それが恋だと心の底から信じてたの。
誕生日の午前一時に届いた、会いたいだけのLINE
昼に会おうと誘ったことは、何度もある。
吹き出しの右と左で、熱量がまるで違ってた。
鎌倉の紫陽花、見に行かない?
日曜はちょっと無理、ごめん。
駅前にできたパン屋さん、土曜の朝に行ってみようよ。
朝は起きれんわ、また今度な。
その今度は、とうとう一度もやってこなかった。
五か月目の秋、私は三十二歳になる。
誕生日の夜、友達にもらった花束を抱えて部屋に戻った。
午前一時すぎ、テーブルの上でスマホが震える。
会いたい。
それだけ。
おめでとうの五文字は、どこにも見当たらない。
そもそも誕生日を聞かれたことすら、なかったっけ。
まさか三十二歳の最初の夜に、こんな形で答え合わせをするなんて。
花束のセロファンが、がさっと床に落ちる音で我に返った。
(私、試食用の小さな紙コップだったのかも)
一口だけ味わって、ぽいっと捨てられるあれ(泣)
洗面台から消えた歯ブラシ
彼の部屋に通った五か月、歯ブラシはポーチに入れて持参してた。
一度だけ、置いていってもいい?と聞いたことがある。
いいよ、の三文字をもらって、コップに立てて帰った朝の足取りの軽さ。
次に部屋を訪ねると、それが洗面台から消えていた。
捨てたのか、引き出しにしまったのか。
誰かの目に触れないように、だったのか。
聞けなかった。
真相は、今も知らないまま。
決定打は、その一週間後の深夜に訪れた。
おなじみの会いたいに、初めて昼の言葉で返してみる。
今夜は行かない。日曜のお昼なら会えるよ。
既読がついて、それっきり。
冷蔵庫がブーンと唸る音だけが、真っ暗な部屋に響いてた。
不思議と涙は出てこない。
膝から力が抜けて、床にへなへなと座り込んだのだけ覚えてる。
結局、五か月ぶんの迷いに、あっけないほど短い沈黙で決着がついた。
あの半年足らず、マジで何してたんだろう。
会いたいLINEの返し方、夜の誘いを昼に変える例文
付き合ってない男性に返信する前に、自分の胸にこっそり聞いておきたいことがある。
この人と付き合いたいのか、会いたいと言われる自分に酔ってるだけなのか。
あの頃の私は、求められる自分にうっとりしていたにすぎない。
行き先さえ決まれば、送るべき言葉もおのずと絞れてくる。
付き合いたい相手には、いつにする?と打ち返す
好きな人からの会いたいには、素直に乗っかって大丈夫。
駆け引きで半日寝かせるのは、ここでは封印。
ただし、日付を決めるボールは、さりげなく彼の手元に戻しておく。
え、ちょうど同じこと考えてた。
いつにする?来週なら水曜の夜か土曜が空いてるよ。
いつにする?と返せば、会いたいは一気に予定の話へ動き出す。
候補を二つ挙げておけば、彼は選ぶだけで済むから返信も早い。
まっすぐ返すのに勇気がいるなら、もう少しやわらかく。
会いたいって言われると、なんか照れちゃうね。
前に話してた定食屋さん、一緒に行ってみたいな。
はにかみをひとさじ混ぜると、重さが抜けて可愛げが残る。
本気か確かめたいなら、日曜のランチを差し出す
真意の読めない相手には、夜の誘いに昼の予定で答えてみる。
今夜はもう出られないんだ。
日曜のランチなら行けるけど、どうかな?
じゃあ日曜ね、と乗ってくる人は、一緒にいる時間そのものを欲しがってる。
反対に、次のどれかが返ってきたら、見られているのは夜の顔だけ。
昼はちょっと、と言葉を濁す。
夜のほうがよくない?と押し戻してくる。
既読をつけたまま、黙り込む。
三つとも、言葉にしないだけで立派な返事。
友達にもこの返し方をすすめてきて、泣いた子も笑った子もいる。
泣いた子のほうが、次の恋に踏み出すのは早かった。
深夜の今から会いたいを、さらりと受け流す
深夜二時の、今から会えない?には、説明もお詫びもいらない。
理由を長々と書くほど、じゃあ明日の夜は?と別の夜を差し込まれるだけ。
もう寝るとこだった。また昼間にゆっくり話そ。おやすみ。
拒む意思をはっきりにじませたいなら、こう。
今からは行かないよー。
会うなら、お日さまが出てるうちにごはん行こ。
語尾を伸ばすだけで、断りの硬さがほどける。
それでいて、夜には出ていかない女だという線は、しっかり伝わる。
翌朝、何事もなかったように昼の誘いが届いたら、その人はまだ見込みあり。
会う気がないなら、また今度は書かない
気のない相手にやりがちなのが、また今度ね、でぼかすこと。
やさしさのつもりのその一言が、相手の中では予約券に化ける。
誘ってくれてありがとう。
でもごめんね、二人で会うのはやめておくね。
理由まで説明する義務はない。
彼氏ができた、仕事が忙しい、といった作り話は、ばれたときに余計こじれる。
しつこく会いたいが続くなら、ブロックしたって誰も責めない。
身の危険を少しでも感じたら、メッセージを保存して、信頼できる人に話しておく。
自分から会いたいを送るなら、香水と同じ量で
女から送る会いたいは、香水みたいに効く。
手首にひと吹きなら、すれ違った相手がふっと振り返る。
振りかけすぎれば、同じ香りでも鼻の奥がツンとしてむせてしまう。
会いたいとはっきり打つのは、多くても月に一度か二度。
それ以外の日は、別の言葉で会う口実をつくればいい。
会いたい理由をひとつ添えると、彼は返事をしやすい
会いたい、だけを受け取った男は、意外と返し方に迷う。
顔はにやけても、どこまで踏み込んでいいのか手が止まるみたい。
だから、会いたい理由をひとつだけ添えてみて。
駅の裏に、餃子のお店ができてたよ。
餃子好きって言ってたの思い出して、一緒に行きたくなった。
この前の旅行の話、続きがずっと気になってて。
近いうちに会いたいな。来週どこか空いてる?
会う理由が具体的なら、男は、行く、の二文字で返せる。
重たい告白に見えないぶん、軽やかに受け取ってもらえるの。
高校からの友達のナナは、大学のサークル仲間にこの方法で気持ちを伝えた。
大人数でキャンプに行った翌日、送ったのはこんな一通。
昨日ありがと。今度は二人で会いたいな。
来月の花火大会、一緒に行かない?
三分後の返信は、行く!!!だけ。
電車の中でそれを見たナナは、両手で口をふさいで、ひと駅ぶん顔を上げられなかった。
いまは、そのときの浴衣姿の写真が二人の部屋に飾ってある。
長い友達期間があったから、たった一度の会いたいがまっすぐ刺さった例。
酔って送って、二分後に取り消した夜
偉そうに書いてるけど、私にも消し去りたい夜がある。
女友達と三軒はしごした帰りのタクシー。
二回デートしただけの人に、指が勝手に動いてた。
会いたいな。
送信済みの文字を見て、酔いがすうっと引いていく。
(待って待って、何してんの私…)
二分後、慌てて追いかける。
ごめん今のなし!
友達にスマホ取られてふざけてた(笑)
嘘まで重ねた自分に、後部座席で頭を抱えた。
翌朝届いたのは、笑、楽しそうだね、の短いひと言。
その朝から、彼のデートの誘いはぱたりと途絶えた。
いま思えば、しくじったのは会いたいと送ったことじゃない。
送ったものを慌てて取り下げて、しかも嘘でごまかしたこと。
弟の意見では、本音を出し入れする女がいちばん扱いづらいって。
送るなら、しらふで、夜十時まで。
一度見せた気持ちは、潔く引っ込めない。
男が舞い上がる会いたい、身構える会いたい
もう一度、弟に聞いてみた。
女の子から会いたいって来たら、どう受け取るのか。
昼間に届いた日には、スマホを握りしめて部屋を三周する、と弟。
里芋を頬張りながら、耳まで真っ赤。
こっちは箸を置いて笑い転げた。
身構えるのは、深夜に来る会いたい。
一瞬、そういうお誘いかなって考えがよぎることも、正直に白状してくれた。
既読スルーのあとの会いたい、断られた翌日の会いたいも、男を後ずさりさせる。
押されるほど引きたくなる生き物なんだってさ。
(それ、女もまったく同じなんだけど)
心の中で突っ込みながら、最後の里芋を弟より先にさらってやった。
返事が来ないあいだ、指を止めておくコツ
送ったあとの沈黙は、実は何より長く感じる。
追いLINEは送らない。
スタンプの追加も我慢。
三日待って反応がなければ、その会いたいはいったん手放す。
私は携帯を玄関の靴箱の上に置いて、わざと遠ざけるようにしてる。
部屋の奥からなら、画面が点いても見えないから。
そのあいだに爪を塗る。
乾くまでスマホに触れない、という自分ルールつき。
ベースと色とトップを重ねていると、一時間はあっという間に過ぎていく。
返事が来ても来なくても、指先だけはつやつやになってるって寸法(笑)
昼に会いたいと言ってくれた人と、関係に名前がつくまで
歯ブラシの一件から半年。
会社の先輩の紹介で知り合った人から、水曜の夜七時にLINEが届いた。
会いたいです。
土曜のお昼、もし空いていたら、川沿いのパン屋さんに行きませんか。
会いたいのすぐあとに、曜日と場所がきちんと並んでる。
しかも、パン屋さん。
あの人とはついに行けなかった昼のパン屋に、この人は迷わず誘ってくる。
携帯を包んだ手のひらが、じんと温かくなった。
(そう、これ。こういうのが欲しかったの)
三回目のデートまでは、夜の部屋に上がらない
あの失敗のあと、自分にひとつ決まりをつくった。
三回目のデートまでは、彼の部屋にも自分の部屋にも上げない、上がらない。
会うのは昼か、長くても夕方まで。
パン屋の人とは、二回目に植物園、三回目に古道具市へ出かけた。
日が傾いたバス停で、今日はここで、と手を振る。
彼は引き止めもせず、バスが角を曲がるまでそこに立っていた。
夜にまったく誘われないことに、湯船の中で首をかしげた日もある。
それより、大切に扱われている感触が、会うたびに降り積もっていく。
体の距離を急がない男は、気持ちの距離も雑に詰めてこない。
三回を待てない人なら、そのうち向こうから姿を消す。
この関係ってなに?を重くせずに伝える一通
付き合う前の関係に名前をつけたくなったとき、LINEで問い詰めるのはおすすめしない。
この関係ってなに?の文字は、画面越しだと取り調べみたいに冷たく光るから。
代わりに、問いではなく自分の気持ちをそっと置いておく。
今日もありがとう。
帰りのバスで、さっきまでの話をずっと思い返してた。
私は、〇〇くんとちゃんと向き合っていきたいと思ってるよ。
質問の形をとらずに気持ちだけ渡すと、彼は答えを急かされずに済む。
その先の言葉は、次に会う日まで取っておけば十分。
パン屋の人の返事は、四回目のデートで、本人の口から受け取った。
温室のベンチで聞いた、会いたいの続き
四回目のデートも、植物園だった。
雨の日曜、ガラス張りの温室は湿った土の匂いでいっぱい。
大きな葉っぱの下のベンチで、彼がぽつりとつぶやく。
最初のLINE、会いたいだけで送るか一時間くらい迷ったんだよね。
それだと軽く聞こえる気がして、店と日にちを書き足したのだという。
(知ってる。あの一行で、私はあなたを信じたの)
心臓のトクトクいう音を、ガラス屋根を叩く雨音がうまく隠してくれた。
その帰り道、ひとつの傘の下で、彼は付き合ってほしいと言った。
あれから二年。
彼の会いたいには、今も必ず曜日がついてくる。
たまに曜日だけが届いて、肝心の会いたいが抜け落ちてるのはご愛嬌。