目が覚めて最初にやることが、トーク履歴の確認だった朝があります。
記憶が途中から白い。指だけが覚えている感じで、恐る恐るアプリを開く。送信済みの吹き出しが五つ並んでいるのを見た瞬間、顔から血の気が引きました。
酔って送るLINEって、送った本人がいちばん困っています。だから受け取った側は、そこに深い意味を読み込む前に、まず前提を知っておいたほうがいい。
酔って送る文は、本音そのままではない
外れているのは、抑制のほうだけ
よく言われるのが、酔ったときの言葉は本音だ、という話。半分だけ当たっています。
消えているのは、言うのをやめておこうという判断のほう。頭の中にあった断片が、順番も加減も無視して出てきているだけなんです。
だから、内容が本心とずれていることは普通にあります。素面なら絶対に選ばない言葉が混ざるので。
加減がなくなる、という現象
好意を五段階で伝えるはずが、いきなり五で出る。冗談のつもりが、真顔の告白みたいになる。
逆に、そこまで思っていないことを勢いで書いてしまうこともあります。うわ、盛った、と翌朝に気づくやつ。
つまり、酔ったLINEの文面をそのまま受け取ると、たいてい読み違えます。
内容より、宛先のほうが情報になる
誰に送ったかは、無意識でも選んでいる
ここが今回いちばん伝えたいところ。
酔っているとき、人は文章を吟味できません。でも、送る相手だけは選んでいます。頭に浮かんだ人、名前を探せた人、送っても大丈夫だと感じた人。
何を書いたかは当てになりませんが、誰に送ったかは当てになる。判断材料にするなら、こちらのほうです。
ただし、一斉送信の場合もある
とはいえ、酔うと連絡魔になる人もいます。三人にも四人にも同じような文を送っている場合、宛先の情報価値は下がる。
見分け方は簡単で、共通の知人がいるなら、そのうち話題に出ます。あの子、酔うといつも連絡くるよね、と。
そういう情報が耳に入ったら、特別な連絡ではなかったと受け止めておくほうが安全です。
送られてくるものの、種類分け
実況型
いま渋谷にいる、二軒目行くところ、といった現在地の報告。
これは繋がっていたい合図ではあるものの、恋愛の意味は薄め。楽しい時間を誰かと共有したいだけのことが多い。
感情型
長めの文で、気持ちや弱音が書かれているもの。
素面では出せない話を出しているので、そこに信頼はあります。ただ、それが恋愛感情かというと別問題。安心して弱音を吐ける相手として選ばれた可能性のほうが高い。
写真型
料理や店の写真だけがぽんと届くパターン。
文章を組み立てる余力がない状態で、それでも接点を持ちたかった形。悪い兆候ではありません。
通話型
着信が来るパターンは、いちばん判断が難しい。話し相手が欲しかっただけのこともあれば、寂しさに耐えかねたこともある。
出るかどうかは自由ですが、出た場合は長話にしないほうがいい。翌日、覚えていないと言われる展開がわりとあるので。
翌朝、送った側で起きていること
五つ並んだ吹き出し
冒頭の話の続きを書きます。
私が送っていたのは、当時いいなと思っていた人への連投でした。いま何してる、から始まって、返信がないうちに二通目、三通目。最後は、寝てるよね、ごめん、で終わっていました。
既読はついていませんでした。それを見て、布団を頭から被った記憶があります。
胃のあたりがぎゅっと縮んで、しばらく動けない。あの朝の感覚は、何年経っても薄れません。
送信取消するかどうかで、五分悩む
消したい。でも、消した形跡が残るのはもっと恥ずかしい。
この葛藤、酔ってやらかした人はだいたい経験しています。結局そのままにして、何もなかったことにしようとする。あるいは既読無視で逃げる。
だから、翌日に女性側から触れてこないのは、嫌っているからではありません。恥ずかしさで固まっているだけのことが多いんです。
その夜、どう返すのが正解か
短く、安全の確認だけ
夜中に届いた連絡への返信は、一行で足ります。
ちゃんと帰れそう?水飲んで寝な。
内容に深く反応しない。感情型の長文が来ていても、そこには乗らない。相手は明日、その文章を後悔する可能性が高いので。
長文で応えない
熱のこもった連絡が来ると、こちらも同じ温度で返したくなります。ここが分かれ道。
酔った勢いに素面で本気の返信をすると、翌朝の温度差が悲惨なことになります。向こうは覚えていない、こちらは全部覚えている。この構図はきつい。
返信は、翌日にもう一度読まれても平気な内容にしておく。それだけ意識すれば失敗しません。
翌日に、蒸し返さない
内容に触れると、逃げ場がなくなる
昨日あんなこと言ってたけど、と切り出すのは避けたい。
本人は覚えているのに覚えていないふりをしている、という場面もあります。そこを突かれると、否定するしかなくなる。せっかく出た本心が、酔ってたから、の一言で回収されてしまう。
触れるなら、状況だけ
どうしても何か送りたいなら、内容ではなく無事かどうかに限定する。
昨日ちゃんと帰れた?
これなら答えやすいし、恥ずかしさを刺激しません。ここから普通の会話に戻れます。
やってはいけない対応
スクリーンショットを送り返す
昨日こんなの送ってきたよ、と画面を撮って見せる。冗談のつもりでも、これは相当きつい。
証拠を突きつけられた形になるので、相手は逃げ場を失います。そこから連絡が途絶えるのは、かなりよくある展開です。
その場で好意を伝える
向こうが感情的になっている夜に、こちらも気持ちを返す。ロマンチックに思えるかもしれませんが、リスクが高い。
翌日、なかったことにされる可能性があります。そうなると、告白した事実だけが宙に浮く。
伝えたいなら、素面のときに。
深夜に会いに行こうとする
いま行こうか、と提案するのも避けたほうがいい。判断力が落ちている状態の相手に、その場で決めさせる形になるので。
心配なら、帰宅の確認だけ。それ以上は踏み込まない。
届いた時間で、意味は少し変わる
まだ店にいる時間
夜の九時や十時に届く連絡は、飲み会の最中に送られたもの。
場が盛り上がっていて、誰かの話題からこちらを思い出した可能性があります。楽しさのおすそ分けに近い。
この時間帯は、返信しても長くなりません。向こうも周りと話しているので、軽く返して終わりでいい。
帰りの電車と、家に着いたあと
問題は、解散後です。深夜零時を過ぎたあたりから届くものは、性質が変わります。
ひとりになって、静かになって、そこで浮かんだ人に連絡している。宛先の情報価値がいちばん高いのが、この時間帯。
ただ、感情の振れ幅も大きくなっています。内容は割り引いて受け取る。この使い分けが要ります。
関係によって、受け取り方を変える
まだ何でもない相手からなら
やり取りが浅い段階で酔った連絡が来たなら、少なくとも警戒はされていません。
ただ、そこから一気に距離を詰めるのは早い。翌日の素面のやり取りが、いつも通り続くかどうかを見てから動く。
元恋人からなら
判断がいちばん難しいのが、これ。寂しさと惰性と懐かしさが混ざっているので、感情の中身を特定できません。
その夜に応じると、翌日に距離を取られる展開になりがち。返すとしても、深夜は短く。話をするなら、素面の時間帯に持ち越す。
職場の相手からなら
翌日も顔を合わせる関係なら、返信は完全に事務的でいい。
気をつけて帰ってくださいね、で十分です。翌日は何も言わない。むしろ、いつも通りに接するのが最大の配慮になります。
返信したのに、既読無視されたとき
夜中の連絡に丁寧に返したのに、翌日になっても何も返ってこない。これ、けっこう起きます。
腹が立つ気持ちは分かります。こちらは起きて対応したわけですから。
ただ、無視ではなく硬直していることが多いんです。返事を書こうとして、昨日の自分の文面を読み返して、また閉じる。その繰り返しで数日が過ぎる。
だから催促はしないほうがいい。二日か三日おいて、まったく別の話題を軽く送る。過去に触れない連絡が届くと、向こうは息を吐けます。そこから普通に戻れることのほうが多い。
脈があるかどうかの、見分け方
素面のときにも、連絡が来るか
これがいちばん確実な物差しです。
酔ったときだけ連絡が来て、日中はまったく音沙汰がない。この場合、深夜の連絡に恋愛の意味を求めるのは難しい。
逆に、平日の昼にも普通のやり取りがあるなら、酔ったときの連絡はその延長として読めます。
翌日の一通目を、どちらが送ったか
翌朝、向こうから何か送ってきたなら、気にしているということ。
昨日ごめん、でも、変なこと言ってた?でも構いません。触れてくる時点で、関係を保ちたい意思があります。
頻度が一定なら、それは習慣
毎週末きっちり届くようなら、恋愛感情というより生活のリズムに組み込まれている状態。
悪いことではありません。ただ、特別扱いされていると考えると、あとで落差が生まれます。
相手が危なそうなときは、別の話
帰れるかどうかを、先に確認する
文面が支離滅裂だったり、泣いていたり、居場所が分からなかったり。こういうときは、心理を読む前に安全の確認です。
いまどこ。誰か一緒にいる。
このときだけは質問して構いません。短く、答えやすい形で。
説教はしない
飲みすぎだよ、とか、そんなに飲むから、とか。正論ではあっても、その夜に言うことではない。
翌日も、蒸し返さない。心配していたことだけ伝えて終わらせるほうが、はるかに信頼されます。
完璧だった返しの、実例
もう寝な、の四文字
知人が酔って送ったLINEに、相手の男性が返したのがこの一言だったそうです。
もう寝な。水飲んでね。
それだけ。彼女が送った長い文には一切触れず、翌日も何も言ってこなかった。
触れなかったことが、信用になった
彼女が言っていたのは、恥ずかしい思いをせずに済んだ、ということ。
その一件のあと、彼女のほうから素面で連絡するようになったそうです。何もなかったことにしてくれた人だから、安心して話せる、と。
酔った連絡への対応で試されているのは、実は口の堅さなんだと思う。乗ってこないこと、広げないこと、覚えていない態度を取れること。
自分が酔って送ってしまったときの、翌朝
取り消さない
消したくなりますが、取り消しの表示は本文より目立ちます。そのまま置いておくほうが被害は少ない。
一行だけ添えて、あとは普通に
昨日、酔ってて変な連絡してごめん。
これで終わり。言い訳を並べない、内容の説明もしない。淡々と、いつもの会話に戻す。
やらかした夜のことは、相手が思っているより早く忘れられます。長引かせているのは、たいてい自分のほうなので。