誕生日LINEはいらない?女性の本音と重くならない送り方、返し方

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誕生日のLINEとか、ほんとにいらないからね。
二十七歳の秋、付き合って半年の彼にそう宣言した。
場所は駅前の焼き鳥屋。
ねぎまの串をくるくる回しながら、わざと軽い声で。
0時ぴったりに連絡が来ないと拗ねる友達を、斜めから眺めていた頃の話。
わたしはそういうの気にしない、さっぱりした女なんで

誕生日の当日、スマホは朝から休みなく震えた。
高校の同級生、前の職場の先輩、一度飲んだきりの人。
ロック画面が、おめでとうの吹き出しで埋め尽くされていく。
なのに、いちばん待っていた名前だけが出てこない。
昼になっても、日が暮れても。

夜の十一時四十分。
ベッドで膝を抱えて、トーク一覧を指で引き下ろしては離す。
新しい通知は、ひとつも降ってこない。
自分で言い出したくせに。
喉の奥がじりじり焼けて、加湿器のしゅーという音だけがやけに耳につく。
(いらないって、そのまま受け取る?普通…)
日付が変わる二分前、スマホを伏せて布団を頭までかぶった。

いらない、は、言った本人も気づかない裏地がある。
あの夜のわたしが、まさにその見本。
親指が送信ボタンの上で止まったまま、夜を明かしそうな人。
届いてほしくない誰かの顔が、頭の隅でちらついている人もいるはず。
恋人に言われたいらないを、どこまで真に受けていいのか迷うことだってある。

目次

誕生日LINEがいらないと言われる理由は、アプリの通知にある

 

何年も話していない人から届く、おめでとうの束

LINEを開くと、今日が誕生日の友だちの名前が目に入る。
便利な機能ではある。
ただ、受け取る側もうすうす勘づくのよね。
この人、アプリに教えられて送ってきたんだなって。

二十九歳の誕生日は、朝七時の時点で通知が三十件を超えていた。
中学の部活の後輩、転職前の取引先、名前を見ても顔が浮かばない人まで。
一件ずつ開くうちに、指先の感覚がだんだん鈍っていく。
お店の入口で、自動ドアが開くたびに流れる録音のいらっしゃいませ。
あの声に、いちいち会釈を返す人はいないでしょ。
アプリにうながされたおめでとうは、あれに近い響き方をする。

送ってくれた一人ひとりに、悪気なんてこれっぽっちもない。
それでも似たような文面がずらりと並ぶと、自分宛ての言葉がどれなのか霞んでいく。
誕生日LINEいらない派の友達も、祝われること自体は拒んでいない。
遠ざけたいのは、通知に急かされた義務のおめでとう。

返信だけで昼休みが終わった日

届いたら届いたで、今度は返す手間がのしかかる。
あの年のわたしは、昼休みをまるごと返信に捧げた。
ありがとう、の五文字を何十回打ったことか。
しまいには、予測変換の先頭にありがとうございます!が居座る始末(笑)
コンビニのおにぎりは、フィルムをはがしたきり机の上で固くなっていった。
はぁ…誕生日って、こんなに指を酷使する日だったっけ。

グループトークも油断できない。
誰かが、今日〇〇の誕生日じゃん、と書き込んだら最後。
お祝いのスタンプが、雪崩みたいに押し寄せる。
自分だけ黙っていると角が立つし、送ったところで誰の目にも留まらない気がする。
主役のほうも、全員にお礼を言うべきか頭を抱えるはめに。
静かに過ごしたい人が、この知らせそのものを止めたくなるのも無理はない。

覚えていてほしくない相手からの一通

何より厄介なのは、そもそも祝ってほしくない相手からのおめでとう。
一度お誘いを断った人、別れた恋人、距離を置きたい職場の人あたりがそう。
覚えてたよ、の気配をまとった一通。
閉めたはずの窓を、外からコツコツ叩かれるのに近い。
返さなければ、冷たい人になる。
返せば、そこからまた会話が転がりはじめる。
この板挟みこそ、誕生日LINEはいらないと検索窓に打ち込ませる正体なのかも。

直属の上司から、絵文字まじりの長文が届いた年もあった。
既読をつける前に、給湯室で三回深呼吸したのを覚えてる。

誕生日LINEはいらないと言う女性の本音

 

翌日、彼が差し出した小さな紙袋

あの誕生日の続きを、白状しておく。
翌日の仕事帰り、彼と待ち合わせた。
改札の前で、紙袋を揺らしながら手を振っている。
いらないって言ってたから、会ったときに渡そうと思って。
中身は、雑貨屋で前に見とれていたガラスのペン。
あの時、見てたんだ…。
ところが、口から転がり出たのはお礼じゃなかった。
昨日、ひと言くらいくれてもよかったのに。

彼の眉が、八の字にぐにゃりと下がる。
言ったよね、いらないって。
返す言葉が見つからない。
紙袋の持ち手を、指が白くなるまで握りしめていた。
彼は、言われたとおりにしただけ。
欲しかったのは、プレゼントでも0時の連絡でもない。
昼間にぽんと届く、短いおめでとう。
あとから思えば、気づくのが遅すぎるんだけどさ。

どうして、いらないなんて口にしたんだろう。
何度も考えて、ようやく腑に落ちた。
先に断っておけば、何も来なくても傷は浅くて済む。
記念日にうるさい面倒な女、と思われることもない。
あのいらないは、空振りに備えて自分でかけた保険だったの。
女のいらないには、ときどきこういう予防線が紛れ込んでる。

本当に、そっとしておいてほしい人もいる

もちろん、保険なんてかけていない人もいる。
三つ年上のいとこは、誕生日の四日後が父親の命日にあたる。
わたしにとっては、将棋を教えてくれた叔父さん。
その週にお祝いの通知が並ぶと、画面を裏返してしまうらしい。
祝ってもらう気分じゃない週に、アプリだけがはしゃいでる感じ。
いつだったか、彼女はそう言って笑っていた。

付き合って二年になる彼は、事情を聞いてから誕生日の送り方を切り替えた。
当日の朝に届くのは、おめでとうの入っていないLINE。

駅前のパン屋さん、今朝はクリームパンが焼きたてだったよ。
帰りに寄れたら寄ってみて。

たった二行。
いとこはその画面を眺めて、久しぶりに深く息が吸えたと話してくれた。
言葉どおりのいらないは、そのまま受け止める。
祝わないことでしか渡せない気づかいも、ちゃんとある。

いらないと言われたら、どっちのいらないかを見分ける

串を回していたわたしと、いとこ。
口にした言葉は同じでも、中身はまるで別物。
見分ける手がかりは、言い方と、その人がほかの誰かの誕生日をどう扱っているか。

笑いながら軽く放るいらないには、強がりの匂いがする。
少し間を置いて、目を伏せて言ういらないは、理由ごと受け取ったほうがいい。
友達の誕生日にはケーキを予約するのに、自分の番だけ首を横に振る人もいる。
そういう人のいらないは、半分くらい遠慮でできているのかもしれない。

どうしても読みきれないなら、質問を小さく刻んでみる。

0時の連絡がいらないの?それとも、当日のLINEもなしがいい?

いらないの範囲さえ見えれば、外すことはぐっと減る。

言う側にも、伝えておきたいことがある。
いらないの代わりに、欲しいものをひとつ口に出す。
0時じゃなくていいから、お昼に一行だけ欲しいな。
二十七歳のわたしに、これが言えていたら。
ガラスのペンを受け取ったあの改札で、素直に笑えていたのに。

誕生日LINEを送るべき相手と、送らなくていい相手

 

付き合ってない気になる人には、送っておいて損はない

付き合う前のふたりにとって、誕生日は堂々と連絡できる数少ない日。
用もないのにLINEするのはためらっても、この日だけは理由が向こうからやってくる。
正直言って、女の側からするとこれが意外と効く。
気になりかけの人からの短いおめでとうは、夜まで頭の片隅に住みつくから。

逆に、同じ日に株を暴落させる人もいる。
会社の同期が、食事会で一度だけ隣に座った男性から受け取った一通がそれ。
午前0時ちょうどに届いた、スクロールしないと読み切れない長文だったらしい。
最後にハートが三つと、プレゼント用意したから会おう、の一文。
彼女には、誕生日を教えた覚えがない。
アプリが知らせたんだと悟ったとたん、パジャマの背中がすうっと冷えたそう。

気になる人へは、朝か昼に、三行以内で。
会う約束は、この一通に混ぜない。
返事が弾んだら、その流れで日を改めて誘えばいいだけ。
お祝いと誘いを同じ吹き出しに押し込むと、相手は断りにくさのぶん身構えるから。

男友達三人に聞いた、女の子から誕生日LINEが届いた日の本音

女から送る場合は、どう受け取られているんだろう。
気になって、大学のゼミ仲間の男三人がいるグループLINEに投げてみた。
女子から誕生日LINE来たら、正直どう?
既読3がつく前に、一人目の返信が届く。

来たらその日は一日そわそわして、仕事にならん。
アプリに教えられたとか関係なくない?打ってくれた手間がもう答えでしょ。
0時ぴったりは、さすがに何事かと思う。昼休みあたりが助かる。

締めくくりに、なぜか敬礼するアザラシのスタンプ。
(アザラシはいらない)

目からうろこだったのは、二人目の返事。
女同士だと、これってLINEが知らせたから送ってきたのかな、とつい勘ぐる。
彼らは、そこをまるで気にしていない。
少なくともこの三人にとっては、送ってくれた事実そのものが記憶に残るらしい。
女から送るのをためらっているなら、アプリ頼みでも胸を張って送っていい。
0時だけは外して、明るい時間帯に。

元彼や元カノに送るおめでとうは、祝福より未練として読まれる

ここで、皮肉な話をひとつ。
焼き鳥屋の彼とは、翌年の春に別れた。
その秋、付き合っていた頃は一度も来なかった0時のおめでとうが届く。

誕生日おめでとう!元気にしてる?

次の年も、その次の年も、同じ文面が日付の変わり目に。
三年目の夜は、枕元で突然スマホが震えて目が覚めた。
暗い天井に、画面の青白い光がぼうっと映る。
(また、この人か…)
元気?と聞かれた以上、返さないわけにもいかない。
元気だよ、ありがとう、と打ってから、結局二時まで眠れなかった。
翌日の会議では、あくびを噛み殺すのにマジで必死(泣)

別れた相手からのおめでとうは、受け取った側の頭の中でほぼ自動的に翻訳される。
まだ気にかけてるよ、の合図か。
今夜ひとりで暇なんだろうな、のため息か。
どちらに転んでも、祝福としてはまっすぐ届かない。
よりを戻したい気持ちがあるなら、なおさら誕生日は外したほうがいい。
相手がたくさんの人に囲まれている日に、元恋人の名前がスマホに光るわけだから。
友達はそれで、新しい彼との旅行先の夜が、しんと静まり返ったと話してた。
送るとしても、疑問符のない一行まで。
元気?の三文字が、相手に返信の義務を背負わせるから。

恋人の誕生日、0時ちょうどのLINEは義務じゃない

恋人同士で揉めやすいのが、0時問題。
日付が変わると同時に送るか、朝まで待つか。
ゼミ仲間の一人は去年、彼女の誕生日が会社の飲み会と重なった。
トイレの個室にこもって、スマホの時計が0時を指すのをじっと待ったんだとか。
送信した直後、隣の個室から盛大な咳払いが聞こえてきたって(笑)

0時にこだわる女性がいるのは本当。
二十七歳のわたしも、実はそっち側だった。
反対に、眠りを邪魔されたくない人もいる。
夜に会えるなら、朝は短い挨拶で足りる。
会えない日なら、0時でも朝でもいいから、その日のうちに必ず。
一日じゅう音沙汰なし、だけは避けてほしい。
相手の好みが読めないなら、誕生日の前に何気なく聞くのが手っ取り早い。

いらないと思わせない誕生日LINEの書き方と例文

 

送る時刻は、相手が落ち着いて画面を開ける頃

付き合う前の人や友達なら、朝の通勤時間か昼休みが向いている。
わたしが一通ずつ噛みしめて読めるのは、お昼にお弁当のふたを開けたとき。
始業直前や会議の合間に届いた言葉は、読んだきり返事を忘れがち。
深夜の送信は、恋人以外にはすすめない。
夜が深いほど、文面に余計な熱がこもって見えるから。
一日遅れたときは、遅くなってごめんね、を頭につければ十分通じる。

おめでとうの後ろに、ふたりにしか書けない一行を

大学の四年間、駅ビルの文房具店でアルバイトをしていた。
持ち場は、バースデーカードの棚。
二十分かけて一枚を選んだお客さんが、レジでボールペンを貸してくださいと言う。
カウンターの端で、ペン先を浮かせたまま固まる人を何人も見送った。
印刷されたハッピーバースデーは、誰でも買える。
その下に書き足す一行だけは、書く人にしか生み出せない。

年賀状だって同じこと。
謹賀新年の印刷より、隅に走り書きされた近況のほうを何度も読み返すはず。
誕生日LINEなら、おめでとうの部分が印刷にあたる。
手書きの一行は、相手とのあいだにしかない記憶から拾ってくる。
前に話してくれた好物、一緒に歩いた道、いま相手が打ち込んでいること。
ひとつ添えるだけで、アプリ任せの一通とは読まれ方ががらりと変わる。

返事を求めない一通ほど、返したくなる

誕生日の主役は、その日たくさんの返信を抱えている。
そこへ質問で締めくくられた文面が届くと、宿題がまた一件増える。
とくに気をつけたいのが、誕生日どう過ごすの?のたぐい。
女はこれで、彼氏がいるか探ってるなと見抜くから。

代わりに、返事は気にしないで、と最後に書き添えてみる。
不思議なもので、そう書かれていると、指が勝手に返信を打ちはじめる。
追い立てられないぶん、気持ちにふわりと余白が生まれるみたい。
会話の糸口を残したいなら、問いかけではなく話のきっかけを置いていく。
前に言ってた映画、観てきたよ。
これなら、返すかどうかを相手が選べる。
この効き目を、わたしはのちに身をもって知ることになる。

関係別、そのまま送れる誕生日LINEの例文

喫茶店や漫画のところは、ふたりの記憶に差し替えて使ってみて。

付き合う前の気になる女性へ、男性から送るなら。

誕生日おめでとうございます。
前に話してた駅裏の喫茶店のナポリタン、今日くらいは大盛りで許される気がします。
いい一年になりますように。既読だけで十分です。

食べ物の好みを覚えている男は、それだけで印象が一段上がる。

女性から、気になる男性に向けて。

誕生日おめでとう!
この前すすめてくれた漫画、三巻まで一気に読んじゃった。
続きの感想は、今度会ったときにしゃべらせて。

会う日は決めずに、次に会う前提だけは残しておく。
重すぎず素っ気なさすぎないこの加減が、ゼミ仲間いわく絶妙に刺さるそう。

しばらく会っていない友達には。

誕生日おめでとう。
さっき、学生のころ二人で並んだラーメン屋の前を通ったよ。
あいかわらず、すごい行列でした。
元気でね。

疎遠になった相手には、思い出の場所をひとつ差し出すと会話がすっと戻ってくる。

恋人へ、当日は会えない場合。

おはよう、誕生日おめでとう。
今日は会えないから、せめて一番乗りを狙って早起きしました。
土曜のお店、窓際の席を押さえたからね。

会えない日は、次の予定を書き込んでおく。
それだけで、画面の向こうの一日がふっと軽くなる。

夜に会う約束がある恋人には、もっと短く。

誕生日おめでとう。
続きは今夜、顔を見て言わせて。

朝はこのくらいでいい。
言葉を取っておくのも、立派な演出。

別れた恋人に、どうしても送りたいとき。

誕生日おめでとう。穏やかな一年になりますように。

疑問符なし、絵文字なし、これ以上は足さない。
返事がなくても、追いかけないこと。

誕生日LINEがいらない側にできる、静かな防ぎ方と返し方

 

誕生日を非公開にした年、届いた通知は四件だけ

三年続いた0時の元気?に、わたしはとうとう白旗を上げた。
三十一歳になる前の月、LINEのプロフィール設定を開く。
誕生日の項目に、友だちへ公開するかどうかを切り替えるところがある。
そこを、オフに。
ほかのSNSに載せていた生年月日も、ついでに消した。

当日の朝、ロック画面には時計の数字だけがぽつんと浮かんでいた。
その日の通知は、全部で四件しかない。
朝六時半に、まず母から。
生後十か月のわたしがケーキに顔から突っ込んでいる写真が、なぜか添えられていた。
次に届いたのは、大学の同級生のメッセージ。
友達の誕生日を、彼女はいまだに紙の手帳で管理してるんだよね。
三件目は、通っている美容院の公式アカウントのクーポン(笑)
四件目は…その話は、もう少しだけ先で。

焼き鳥屋の彼からは、うんともすんとも言ってこない。
それに気づいたのは、夜、湯船につかっていたとき。
(覚えてたんじゃなくて、LINEに教えてもらってただけ…?)
思わず吹き出したら、お湯がぱしゃっと顔にはねた。
鼻に入って、盛大にむせる。
三年分の0時のおめでとうは、アプリの親切だったらしい。

誕生日を隠すと、アプリに背中を押されて送ってくる人はきれいにいなくなる。
残るのは、自分の手で日付を覚えていた人だけ。
非公開の設定は、人づきあいのふるいみたいなもの。
一方で、ふるいの目からこぼれる人もいる。
後日、気づけなくてごめんね、と謝ってきた友達が二人いた。
届いてほしくない一通に振り回された年のあとなら、一度オフにするのも手。

気のない相手や元彼には、お礼の一文で幕を引く

隠していても、届いてしまう一通はある。
返すなら、お礼だけで閉じる。
質問は返さない。
絵文字もスタンプも添えない。
今度お礼させて、は禁句。
相手に次の一手を渡さない文面が、波風を立てずに線を引く近道になる。

前に誘いを断った男性へは、これくらいで。

わざわざありがとう。素敵な一年にします。

元彼からなら、さらに削って。

ありがとう。

元気?と聞かれていても、元気だよ、で止める。
そっちは?と打ちかけた指は、ひっこめて拳ににぎる。

職場の上司には、きちんと丁寧に。

ありがとうございます。この一年も、どうぞよろしくお願いいたします。

グループでまとめて祝われたときは、個別に返さず一回で済ませていい。

みんなありがとう!これからもよろしくね。

そっけなく見えるかな、と気に病まなくて大丈夫。
愛想のいい返事は、相手の目に次の扉が開いたように見えるの。

返事をしないと決めていい相手もいる

別れ際にこじれた相手。
何度断っても誘ってくる人。
そういう相手のおめでとうには、返さないという返事がある。
トークは開かず、通知の表示で中身だけ確かめておけば、既読もつかない。
メッセージが止まらない、言葉が荒れてくる。
そうなったら迷わずブロックして、画面を保存しておく。
身の危険がよぎったら、家族や警察の相談窓口に早めに話を通して。
誕生日を静かに過ごす権利は、祝われる本人の手の中にある。

気になる人からの誕生日LINE、返し方ひとつで次につながる

 

四件目の通知と、箸から落ちた卵焼き

四件目が届いたのは、お昼の十二時十分。
デスクでお弁当を広げ、卵焼きを箸でつまんだ、ちょうどその時。
送り主は、陶芸教室でときどきろくろが隣になる人だった。

今日が誕生日でしたよね。おめでとうございます。
前に話していた青い釉薬の湯のみ、焼き上がったらぜひ見せてください。
お返事はいりませんので。

卵焼きが、ぽとりとお弁当箱のすみに落ちる。
(え、待って、なんで知ってるの?LINEには出してないのに)
記憶をたぐると、ひと月前の教室の流しが浮かんできた。
手についた粘土を洗い落としながら、ぽろっと言ったんだった。
十月十四日で三十一になるんです、って。
一度きり、それもほとんど独り言。
まさか、あれを拾われていたとは。

お返事はいりません、と書いてあるのに。
気づけば三分後、長めの返信を送り終えていた。
返事はいらないと言われると、なぜか返したくて指がうずく。
焼き鳥屋の夜から四年。
いらない、という言葉に、こんな使い道があったなんて。

覚えていてくれた驚きを、ぼかさずに返す

あの日の返信は、たしかこんな文面だった。

覚えていてくださったんですね。画面を二度見しました。
LINEに誕生日を出していないので、今日の連絡は家族と友達だけ。
あとは美容院のクーポンくらいでした(笑)
湯のみ、来週の教室で窯から出る予定です。よかったら見てやってください。

ありがとう!とスタンプだけで返すと、覚えていた側の手応えがどこにも残らない。
何に驚いたのかを、具体的に書く。
わたしの場合は、非公開にしていた誕生日を知っていたこと。
そこへ、あなたの一通は数少ないうちのひとつだった、という事実をさりげなく混ぜる。
ゼミ仲間の一人いわく、これを言われたら来年も絶対に祝おうと決めるって。
男性が女性から受け取ったときも、理屈は変わらない。
覚えてたんだ、の驚きを包み隠さず返されると、送った側の口元は勝手にゆるむ。

お礼の中に、会う口実をひとつ

湯のみの話は、ただの近況報告じゃない。
見てもらう、という名目で、次に会う理由をこっそり忍ばせてある。
祝ってもらった側には、お礼という大義名分がついてくるでしょ。
だから誘いやすいの。
お礼にコーヒーでもごちそうさせて。
気のない相手には禁句だったこの一言が、気になる人の前では切り札に化ける。

翌週の教室で、窯から出たばかりの湯のみを二人でのぞきこんだ。
縁が少しゆがんでいるのを見て、彼が、これがいいんですよ、と目を細める。
駅までの十分が、あっという間。
その夜、今度は彼のほうから、週末のごはんの誘いが届いた。

誕生日LINEはいらない、の代わりに言えるようになった一言

 

カレンダーに残っていた、名前のない予定

付き合いはじめて半年ほどたった頃。
彼のスマホで、週末の天気を見せてもらっていたときのこと。
カレンダーの十月十四日に、見覚えのない予定が入っていた。
青い湯のみの人、誕生日。
聞けば、あの教室の帰りの電車で、すぐに打ち込んだのだという。
名前じゃなくて、湯のみの人って!
まだ下の名前も知らなかったからね、と彼はさらりと言う。
顔がかあっと熱くなって、反射的に彼の二の腕をぺしっと叩いた。

アプリの知らせを待たずに、日付を記憶の引き出しにしまっておいてくれる人がいる。
二十七歳のわたしが、いらないと言いながら喉から手が出るほど欲しかったもの。
その答えに、四年越しでたどり着いた気がする。

今年の誕生日、向かいの席から届いたLINE

今年の誕生日の前の晩、彼にこう頼んだ。
0時は寝てていいよ。
そのかわり、朝ごはんの席でLINEして。
いらない、で逃げずに、欲しいものをそのまま手渡す。
三十四歳にして、やっと言えた。

翌朝、向かい合ってトーストをかじっていた。
テーブルの上で、スマホがぶるっと震える。
目の前にいるのに、わざわざLINE?
彼はマグカップで口元を隠して、窓の外ばかり見ている。

三十四歳おめでとう。
湯のみ、今年も割らずに使ってね。

青い湯のみに注いだほうじ茶から、湯気がゆらゆらとのぼっていく。
画面がうっすら曇って、文字のふちが少しにじんだ。

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